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2023.01.30 Other

2023年1月29日 朝日新聞朝刊1面

MSI協同組合と当団体組合員企業の株式会社ヴェルデュール様が掲載されました。
ありがとうございました
(多民社会)技能実習、変革迫られる現場 人件費、日本人の1.5倍「即戦力」
 業務用ミシンが勢いよく動くと、裁断された布が服に仕立てられ積み上がっていく。岐阜県羽島市の縫製会社ヴェルデュール。ミシンを踏む、ほぼ全員が技能実習生だ。ベトナム出身のデイン・リック・タックさん(39)は「最初は不安だったけど、ここに来られてよかった」と笑った。
 近藤知之社長(49)は「外国人実習生は、安価な単純労働者ではない」と話す。同社で働く実習生の賃金は岐阜県の最低賃金時給910円を上回り、長時間残業は認めない。宿舎は工場近くの、日本人も暮らすアパート。エアコンなど家電付きの2LDKに4人一組で暮らす。「適正な賃金を払い、宿舎費などを含めれば、人件費は日本人の1・5倍」。それでも、実習生を頼るのは「即戦力の彼女たちがいなければ仕事が回らないから」。求人しても日本人労働者は集まらない。
 ■賃金不払い横行
 岐阜は日本有数の縫製業が盛んな地域だが、1980年代半ばから中国など人件費の安い国との競争にさらされた。そこで利用されたのが、93年創設の技能実習制度だ。
 制度の目的は途上国への「技能移転」だが、悪用された。外国人を「研修生」として受け入れた前身の制度では最低賃金制度が適用されなかった。実習制度でも、賃金不払いなどが横行した。月200時間に迫る長時間残業や粗末な宿舎での過酷な生活……。各地で技能実習生への人権侵害がくり返された。米国務省からは、制度が「人身取引」と批判された。
 「岐阜の縫製業は、不正件数ばかりでなく、悪質な事案が多かった」。取り締まる岐阜労働基準監督署の監督官は話す。だが、近年、変化を感じるという。「いまも不正はあるが、法を守り、状況を変えようという経営者や監理団体が現れ、二極化している」
 実は、デインさんも賃金不払いの被害者だ。最初の実習先だった愛媛県の縫製工場では給料が支払われなかった。支援団体とともに転籍の仲介をしたのが、近藤さんが加入する監理団体「MSI協同組合」だ。
 監理団体は、技能実習生の募集や受け入れ手続きなどを行い、受け入れ企業が適正かを監査し、指導する立場だ。しかし、不正の手口を企業に指南したり、企業の不正を黙認したりする監理団体も存在している。
 MSIは違う。加入できるのは、不正のないクリーンな企業だけ。事前に加入希望社の「身体検査」を徹底する。加入後の監査は、実習生に待遇や労働環境を直接聞き取る。企業に給与明細発行を義務づける。実習生を支援してきた労働組合出身者が監査する。
 ■選ばれる土地へ
 縫製会社2社も経営する井川貴裕代表理事(49)は「法律や決まりを守るのは当たり前。会社を、岐阜の縫製を存続させるには、実習生に選ばれる土地にしなければならない」。
 産業界では、原料調達から製造、販売までのサプライチェーン全体で人権侵害を防ぐ「人権デューデリジェンス」が求められるようになった。国際的潮流だ。
 政府の有識者会議は、多くの問題が指摘される技能実習制度の見直しにも言及。井川さんは言う。「実習制度には矛盾と問題があり、正すべきところはある。でも、このまま廃止されれば、日本から縫製業はなくなるでしょう」(岡田玄)
 ▼2面=共生探る地域
 ◇技能実習制度が創設されて拡大が進んだ30年間は、日本経済が長く低迷した「失われた30年」とも重なります。人権侵害など多くの問題を指摘されながら、低賃金の実習生に頼り、人手不足で依存を深めました。産業や地域はどう変わったのか。制度見直しに向けて政府が議論を始めた今、考えます。

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