2022.04.01
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シリーズ《岐阜縫製業の今①》
実習生不在で細る物作り 入国再開も「追いつかない」
繊研新聞 2022年03月29日更新 一部抜粋
コロナ禍で厳しい状況に立たされている業種の一つが国内の縫製業だ。
縫製工員不足や取引先との工賃交渉、EC販売を含めたDtoC(メーカー直販)戦略など課題は山積している。
縫製業が栄え、技能実習生が多く働く岐阜の縫製工場の現場を歩いた。現状と課題、展望をリポートする。(森田雄也)
実質実習生は半分以下
「今年は本当に厳しい一年になるだろう」と、レディスアパレル主体の縫製工場
理由は技能実習生をはじめとする縫製工員不足だ。
同社はコロナ禍前はグループ全体で中国からの技能実習生35人を受け入れていた。
それがコロナ禍で多くが帰国。今では20人まで減ってしまった。
今残っているうち8人は在留資格「技能実習」を修了し、本国への帰国困難者として在留資格を「特定活動」に切り替えて働いている〝元実習生〟。
実際、航空便の往来が少なかったり、チケットが高額だったりして、帰国が難しいのもあるが、人手不足の中でも、最低限の工場運営ができるようにお願いして残ってもらっている部分もある。
創業50年以上の歴史がある岐阜市の縫製工場、アイエスジェイエンタープライズでは、コロナ禍前に12人いた中国とベトナムからの技能実習生が、現在は9人になった。
人数だけ見ると3人しか減っていないが、技能実習の在留資格を持つのは4人しかいない。
残り5人は「特定活動」で働いている人たち。実習生は実質は3分の1だ。
特定活動は基本的に6カ月ごとの更新。航空便の往来が平時に戻るほか、実習生本人の意向でいつ帰国してしまうか分からない。
それだけに「先の生産計画を立てるのが難しい」とアイエスジェイエンタープライズの井川貴裕社長は強調する。
人手不足で倒産の懸念
人手不足はこの2社に限ったことではない。
岐阜県の縫製企業で構成する組合が昨年冬に組合企業に行った実習生に関するアンケートによると、回答があった12社平均でコロナ禍前と比べて実習生の数は25%減になっているのが分かった。
組合の関係者は「このアンケートの時点よりもさらに状況が悪化している。
実習生の人数がコロナ禍以前の30%以下になっている工場もある」と強調する。
組合企業からは、「このままでは人手不足による倒産もあり得る」とのコメントもあった。
実習生に限らず外国人の新規入国はコロナ禍で困難になっている。
昨年11月8日、政府は外国人の新規入国制限を大幅に緩和したが、新型コロナウイルスの新たな変異株であるオミクロン株の出現で、同月30日には入国を再度停止。
今年3月1日にようやく入国が再緩和され、現在では1日あたり入国者総数上限が7000人にまで増えた。
「4月から少しずつ実習生が入国予定」など徐々にだが、実習生が戻ってくる兆しはある。
しかし、縫製現場からは「まったく追いつかないだろう」との声が漏れる。
特に技能実習1年目(技能実習1号)の場合は縫製技術が未熟で、生産効率が上がるまで「最低1年半は掛かる」。
縫製工員が戻ってきても、軌道に乗るのは来年後半からになる可能性もある。
「仕事自体は非常に多いが受けられない。指をくわえてみているだけ」と工場関係者は悔しそうに話す。